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20230203

中国・馬雲氏の世界

〖プロローグ〗

アリババ・馬雲氏(ジャック・マ-)は1999年9月、香港を本部とするアリババネットを創業する。爾来、会社は破竹の勢いで、国内で成功する。加えて、世界のアリババとして、世界経済の中で頭角を現す。2017年米国・ニュ-ヨークにあるトランプタワ-を訪れ、ソフトバンクの孫正義に続いて海外のIT企業経営者として2人目のドナルド・トランプ次期大統領との会談となり、その場で、馬氏は「5年間で米国国民100万人の雇用を創出する」と約束した。孫正義の会談も馬雲氏が仲介したと言われる。

2019年、馬氏はアリババ会長の職退き、張勇CEO後継に据える。55歳の誕生日である2019年9月10日、アリババグル-プ会長職退任した。しかし、2020年10月24日、上海で開催された金融機関や金融監督当局関係者の前で、中国政府の金融政策を-①国内の金融規制は技術革新の足かせである。②中国の銀行は質屋程度であると発言した-この発言は政府関係者の面子を潰されたことで、アリババグル-プの規制へと突き進んだ。以下、これまで、順風満帆であった馬雲氏の前途に暗雲が立ち込めた。以下、その後の馬雲氏の動きをウオッチした。

馬雲氏
出典:「The financal news JAPAN

〖失脚の代償〗

中国政府は20年後半、IT業界を「是正する」という大々的な取り組みを始めた。総点検の中、アリババは独占禁止違反により過去最高額の28億ドル(当時の為替レ-トで約3000億円)の罰金を科された。加えて、アントの巨額の新規株式公開(IPO)計画は、突然中止された。以来、馬雲氏の発言は抑制されたものとなった。

動静不明

馬雲氏の批判を機にアリババグル-プの規制と突き進んだ。11月15日に上海と香港で予定されていたアリババグル-プ傘下のアントグル-プの新規市場への上場は2日前の11月3日に突如延期された。新規株式公開(IPO)が実施されていれば370億ドル(約3兆8300億円)を調達できるはずであった。政府の締め付けはその後も様々民間セクタ-に及んだ。その後、馬雲氏の動静は不明となった。

邦字紙

22年12月16日付「日本経済新聞」によると、中国のネット大手、アリババ集団を創業した馬雲氏と東京であった関係者は「ちょっと疲れたようすであった」と印象を語った。無理もない。既述のように馬氏が政府批判の一端として「優れたイノベーションは監督を恐れない」と発言したのだ!この発言は中国共産党の怒りをかったのは2020年の秋。これを機に馬雲氏は姿をみせなくなった。当局の監視下に置かれ、一時は出国も許されなくなったと噂されている。同氏は半年近く東京で暮らしているという-恐らく、孫正義氏が影響を行使したと思われる。

孫正義氏
出典:「日本経済新聞

〖新自由主義〗

(当局見解)

同紙の見解は続く-アリババ集団傘下の金融会社アント・グル-プは上場延期に追い込まれた。その後、中国の金融監督トップ郭樹清氏は巨大IT企業の金融業務に関し、「是正が基本的に完了した」と表明した。国営通信・新華社がインタビュ-を1月7日夜に配信していた。この背景には習近平指導部は近年、電子商取引(EC)最大手アリババ集団などへの統制を強めてきたが、区切がついたと示唆したと見られる。アリババ傘下で、電子決済サ-ビス「アリペイ」を運営するアント・グル-プは2023年1月7日、アリババ創業者の馬雲氏がアントの支配権を手放すと発表。中国は“新自由主義そのものも否定に舵”を切った。

(新自由主義)

新自由主義の象徴であった馬雲氏であったが、ではどのような経緯で生まれたのか!その推移を見ると-2002年に「三つの代表」と呼ばれる思想を党規約に盛り込んだ。労働者や農民の政党である共産党に、民間の企業家も入党できるようにした。江沢民氏の背中を押したのは「新自由主義者」と呼ばれる中国の経済学者である。「社会主義市場経済」を発案した呉径璉を筆頭に“国有部門をできだけ小さくし、市場の力で民の活力を引き出すべきだ”と訴えた。

(三つの代表)

新自由主義を唱えたオ-ストリア出身の経済学者ハイエクに連なる思想である。大きな政府を掲げたケインズ主義のほころびが目立ち始めた1980年代以降、“サッチャ-英政権やレ-ガン政権が取り入れ、経済の再生に踏み切った”。鄧小平の主導で1978年に始まった中国の改革開放政策(第11期3中全会/1978年12月)も、“世界的な新自由主義の潮流に乗った動き”である。

鄧の後を継いだ江沢民氏は、首相を務めた朱鎔基氏とともに経済の市場化と国有企業の改革を進めた。私営企業家の改革を進めた。私営企業家の入党を認める「三つの代表」は“中国式の新自由主義”を新たな段階に押し上げ、中国を世界2位の経済大国に導いた。

その新自由主義が今、逆風にさらされている。わずかな人に富が集中し、格差が極端に広がったからである。中国は新自由主義のそのもの否定に舵をきった。習近平国家主席は国有企業に大きな力を与え、経済のあらゆる分野に党のにらみをきかせる。まるで“毛沢東時代の計画経済”に戻ろうとしているからです。新自由主義の申し子ある馬雲氏が、中国で再び表舞台に立てる日は来るのか。その運命は、世界経済の未来にも影を落とす。

緩和論文

アリババ集団がロビ-活動のために学者などに資金をばらまいている。当局の規制を緩め、自社の評判を回復する狙いである。関与する中国の学者は、アリババを指示するため論文を発表。国家市場監督管理局(SAMR)をはじめとする当局に報告書を提出した。

フィナンシャルタイムズ(FT)の取材に、計10人を超える学者、政府高官、アリババの社員が応じた。アリババは学者らに資金、デ-タ、情報、インタビュ-の機会を提供し、研究を後押ししたとの証言を得た。同社は一部の学者の研究プロジェクトに資金を供与することも約束した。FTはアリババからの資金受領を求めた人物が書いた複数の報告書を入手した。そのうち4本は同社に対する規制緩和を提言している。

いずれも中国の学術誌に掲載されただけでなく、政策に影響を与える目的で形を変えて政府高官に渡されたと、執筆者は明かす。当局がアリババに対する姿勢を緩める兆しある。同社の地元、浙江省の共産党トップは2022年12月、北京で開かれたプッラトフォ-ム経済再生に関する会議の後、2年ぶりにアリババ本社を訪問した。

SAMRに提出した報告書の一つは-アリババが新型コロナウイルスの感染拡大の中で「デジタル経済の新たな成長とインノべ-ションを実現した」と主張した。ほかの報告書は-アリババが「貧困縛滅を中核の戦略」を定め、地方経済を支援していると指摘した。FTはこうした取材結果の詳細をアリババについて伝えたが、同社は「誤解を招く前提に基づいており、不敵切な行動に関する事実無根の疑惑をほのめかす怪しい情報にすぎない」と回答した。

馬雲氏の財力

NY市場上場

馬雲氏の財力を見ることにする。中国のシンクタンク「胡潤研究院」によると、2020年、中国国内で20億元(約321億円)以上の個人資産を有する富豪は過去最高の2397人に上った。そのトップに君臨するのが大手IT大手「アリババ」創業者のジャック・マ-(馬雲氏)である。その総資産額は4000億元(約6兆4000億円)とされる。同氏がアリババ創業したのは、今から20年前ほど前の1999年のことである。

電子商取引

中国インタ-ネット黎明期に電子商取引の将来性に着目し、ネット、通販事業を主軸に1代で同社を世界的企業に成長させた。事業の拡大とともに国内亥の企業を次々と傘下に収め、2014年米ニュ-ヨ-ク証券取引所へ上場を果たした。中国の社会情勢に詳しい石平氏によると、以下の見解を述べている。

物言う人

馬雲氏は2019年にアリババグル-プの会長を退き、2018年9月には取締役も退任していますが、物言う実業家として中国社会に強い影響力を持ち続けている。中国共産党に対しても素直な物言いをするこことで知られている。当局が快く思っていなかったのは間違いなかったと評論家石平氏が語る。

エピロ-グ

アリババ主催の2022年「独身の日」向けのセ-ルが行われ、各通販サイトや調査機関が実績結果を発表している。取引額を見ると、10月31日20:00-11月11日23:59の間、総合通販サイト動画アプリが去年13.7%増えて総額1兆1154億元(約21.89兆円)であった。このうち天猫(Tmall)、京東(JD.Com)、拼多多(Pin duoduo)などの総合サイトが2.9%増の9340億円(約18兆33兆円)、抖音(Tiktok)、点淘(Diantao)、快手(Kuai shou)などの動画サイトが146.1%増の1814億元(約3,56兆円)であった-アリババのITを駆使した商法は今後も持続可能なものとなった。

馬雲氏の動静は不明な点があったが、最近次のような報道があった-中国ネット通販最大手アリババ集団創業者の馬雲氏(ジャック・マ-)がタイ最大級の財閥企業「チャロン・ポカパン」(CP)グル-プ「中国では正大集団として知られる」会長のタニン・チャラワン(謝国民)氏の息子のスパチャイ・チャラワノン(謝鎔仁)氏と面会したと報じた。馬雲氏の影響力は再び世界の注目することになった。今後の行方に注目したい。

なお、今後の注目について、東京財団政策研究所主席研究員の柯隆氏は、「中国はイノベーションと統制を同時進行しようとする中国の矛盾に満ちた戦略は今後、世界のどのような影響を与えるのだろうか。「世界に新しい中華経済圏が出現する」-と予測する。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

-馬雲氏来歴-

入試挑戦

馬雲氏は1964年に浙江省杭州に生まれる。早朝から自転車で近くのホテルに行き外国人と話す機会を得る。このような生活を9年間続けた後、文通で知り合った女性からJackと呼ばれるようになった。中学・高校は進学校ではなく、全国普通高等学校招生入学考試(高考)を2度受験したが、数学の成績1点、2度目は31点だったので、大学進学を諦め3輪自動車の運転手となった。

浙江省杭州市
出典:「Newsweek

劣等生・落第生だったことは対照的に優等生(高考状元) 「成績第1位の首席合格者」だった百度創業者李彦宏と比較されることが多い。爾来、『人生』(著者・路揺)という本に出会い再度、大学進学を志す。1988年、杭州師範大学(現杭州師範大学)英語科卒業。当年より1995年まで杭州電子工業にて講師として英語と国際経済貿易を教えた。

実業界へ

1995年、米国で出会ったインタ-ネットにヒントを得て、中国発のビジネス情報発信サイトカ「中国イエロ-ぺ-ジ」を開設する。1998~1999年にかけて政府機関の中国対外貿易合作部の下部組織である中国国際電子商務中心に所属し同部公式サイトと同国インタ-ネット商品取引市場を開発する。1999年に同商務中心を辞職し、杭州に研究開発センタ-を設立する。9月に香港を本部とする“アリババネットを創業”。

同社はeコマ-ス、特にB2Bを開拓し、その後、アリババは世界最大のB2サイトの一つとなった。2003年、オンライインモ-ル淘宝網を開設。2005年8月にアリババが中国ヤフ-を買収し、馬は会長に就任。2006年には香港の大富豪である李嘉誠が設立した長江商学院CEOプログラムを受講。2007年にはソフトバンク(現:送付とバンクグル-プ)取締役に就任。ソフトバンクの孫正義とは親交が深く、アリババはソフトバンクにとって最も成功した投資案件とされた。この時期、馬雲氏は一部の政府高官と親しく、また、馬雲氏の成功は中国が誇るべきものであったことから、規制当局のある程度は馬雲氏の自由な発言を容認していたされる。2016~2018年にかけて、インドのムケシュ・アンアパニにこされるまではアジアで1番の富豪であった。

李嘉誠氏
出典:「日本経済新聞

引用資料

  • 「日本経済新聞」2022年12月16日
  • 「産経新聞」2023年1月09日
  • 「日本経済新聞」2023年1月22日
  • 「日本経済新聞」2023年1月24日
  • 「中国経済新聞」2022年9月21日
  • 「中国経済新聞」2023年2月01日

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