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20220403

ウクライナ情勢に伴う中欧班列の影響

プロロ-グ

「中欧班列」は習近平国家主席が提唱する「一帯一路」政策のユーラシ大陸を内包する壮大な経済圏構想である。同経済圏構想が実現すれば、66カ国、44億人をカバ-する巨大経済圏構想(シルクロ-ド経済ベルト)が誕生することになる。その一端を担うのが「中欧班列」(鉄のキャラバン隊)である。

「中欧班列」は今日までに順調な発展遂げてきたが、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻により、同鉄道は影響を受け始めており、中国の地方政府は、戦争保険の適用を考えているようである。「中欧班列」の輸送物資の半分はロシア向けであることから中露間の重要な経済的な絆となっている。以下、その現状および今後の見通しについて報告する。

中欧班列
出典:「CRI

概況

路線

2011年3月、「中欧班列」の最初の「渝新欧鉄道」(四川省重慶-ドイツ西部デュイスブルグ)が開通した。これまでに同鉄道は中国全土の約70都市と欧州23カ国約180都市を結び、2022年1月29日に累計で5万本を突破した(注1)。

2021年の「中欧班列」の運行本数は前年比22.4%増の1万5183本、輸送されたコンテナ数は前年比29%の146万4000TEU(20フィ-トコンテナ換算値)と大きく増加した。「渝新欧鉄道」は中国国内(重慶)-カザフスタン→ロシア→ベラル-シ→ポ-ランド→ドイツである。

売上額

2021年の輸送貨物額は749億ドルで、2016年の80億ドルから大幅に増加した。輸送貨物も、当初の携帯電話やノ-トパソコンなどのIT製品から、現在では自動車部品、完成車、科学工業品、機械電機製品、穀物、酒類、木材などに拡大した。輸送品目数は5万種類を超えた(注2)。

新型コロナ禍

「新型コロナ禍」でコンテナ輸送などが大きな影響を受ける中で、「中欧班列」は逼迫する輸送網を一定程度代替する役割を果たしたと思われる。2022年1月10日付「経済日報」(中国)は、「新型コロナの影響で国際的にサプライチェーンが大きな影響を受け、海上、航空物流が円滑に機能しない中、「中欧班列」の順調な運行は、企業の輸出上のボトルネックを大幅に緩和する役割を果たしたという。

ウクライナ向け

武漢発の「中欧班列」路線の中には、ウクライナ・キエフ行きのル-トが2020年6月に開通した。中国紙「環球時報」(2022年3月5日付)によると、現在、武漢発を含めた中国発のウクライナ行き、もしくはウクライナを通過する「中欧班列」は一時停止している。このようにウクライナを通過する列車は少なく、影響は軽微と複数のメディアは伝えている。

ロシア向け

2021年の「中欧班列」の運行本数は前年比22.4%増の1万5183本、輸送されたコンテナ数は前年比29%の146万4000TEU(20フィ-トコンテナ換算値)と大きく増加した。そのうちの中ロ間は7000本近くで、国別では最も多く、貨物の約半分を占めているとされる。中国から欧州・ロシアに送る貨物は、パソコンなど電子部品、機械、自動車部品が多く全体の8割を占めるという。中国への荷物はロシアの木材と欧州の自動車部品が多いとされる。

上海市の共産党メディアによると、上海からロシア向けの「中欧班列」の貨物量はロシアのウクライナ侵攻前に比べて約2倍増えたという。コンテナ海運の最大手APモラ-・マ-スク(デンマ-ク)などがロシアの港湾の利用を控えているため、代替手段として「中欧班列」の利用が増えたという。ただ、上海発の「中欧班列」の全体の貨物量は侵攻前と比べて4割減っているという。国際流通大手独DHLなどが欧州向けでロシアを経由する「中欧班列」の利用は控えているという。

戦争保険

ウクライナの戦場
出典:「時事ドットコム ロシア軍ウクライナ侵攻写真特集

動き

中国当局は「中欧班列」に対して、ロシアのウクライナ侵攻に対する荷主の費用となる戦闘で被害を受けた際に補償を受けられる「戦争保険」について、中国の地方政府の傘下の運営会社が負担する。一部で運賃を約2割値下げする動きもある。約半分は中ロ間の貨物であり、米欧の経済制裁にあえぐロシア経済の下支えにつながる可能性もある。

成都/重慶

四川省成都市(省都<省会>人口1633万人<2019年>)の「中欧班列」の運営会社は本年3月からロシア、ベラル-シ、ポ-ランドを通過する路線の顧客について、戦争保険費用の負担を始めた。出発後に発生した顧客の責任ではないすべての費用を負担し、欧米の制裁で列車が引き返した場合の費用も負う。重慶市(3100万人)も戦争保険に負担について検討始めた。重慶市、成都市、西安市(陝西省省都1200万人)の3拠点は「中欧班列」全体の5割強を扱っている。

エピローグ

これまでに「中欧班列」は11年の歴史を刻んできた。特に大きな事故もなく歩んできた。次第に輸送量も拡大し、少なからずユラシア-大陸諸国の経済発展に寄与してきたといえる(注3)。しかし、2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻によりG7はロシアへ厳しい制裁を加え、両陣営は制裁を繰り広げている。前述のように「中欧班列」の輸送量の半分をロシア向けで、ロシア経済に徐々に寄与していると思われる。

中国の今後の方針として、2022年1月に開催された中国国家鉄路集団の会議で、「中欧班列」の戦略としての機能をさらに発揮させ全行程の輸送調整運動メカニズムを構築し、中国としては引き続き「中欧班列」の活用に向け積極的に取組むという。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

  • (1)「人民日報」2022年1月30日
  • (2)「人民鉄道網」2022年1月30日
  • (3)「人民網日本語版」2021年6月22日

引用資料

  • 「日本経済新聞」2022年3月28日
  • 「ビジネス短信」、日本貿易振興機構、2022年3月9日

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